端役の黙祷

埃に埋もれた看板がいう
「本日の上演は終了しました」と
疵の少ない客席を選べ
C席は唐草に食われてしまった

男が戦没者を演じている
捨てられた舞台の暗がりで
両手をつきだし 白目を見開き
舌を出し 動かず 息もせず
天使が来るまで演じ続ける
次の場面を待ち続ける

こびりついた生卵
黴に蝕まれた靴
階段に栄光をなすり付けた

ト書きは嘘をついた
 ——B、客席の遊撃兵Gに撃たれる
ト書きは男の時間を固めた
 ——B、天井照明を睨んだまま息絶える
男はト書きを信じている
 ——世界は光に包まれ、天使たちがBを導く

「本日の上演は終了しました」

あの彫刻を目に刻め
客席を射す銃痕に 指を置け
いまだ 誰も触れようとはしない
天使を待つ 愚かな男優へ
銃を捨て 両手をのばせ